皆さんは社会人になってから、「あ~、もう無理。仕事辞める。明日辞める。もう辞める」なんていうモードに入ってしまった事、ありませんか?1ミリの不満もなく、毎日会社に行くのが楽しくて仕方がない!なんていう人は少数派。
長い会社員人生の中では1度や2度、今の仕事を強制終了=退職という決断をしてしまいたい衝動に駆られる人、少なくないのではないでしょうか。「やっぱり自分はこの仕事、向いてない気がする」「最近部長の当たりがキツくてもう限界」「やってもやっても仕事が終わらない…今日で、何連勤め?」「いつまでこの生活が続いていくんだろう…」強制終了をしたくなる理由は人それぞれでしょう。
皆辞めたいのかもしれない
仕事内容、人間関係、労働環境、これからの自分のキャリアや業界の成長性。日常のちょっとした仕事や会社に対する違和感が積み重なった結果、「あ、辞めよ」となってしまう人もいるかもしれません。
夜の居酒屋では、新入社員が、OLさんが、ナイスミドルなおじ様が、時にはため息交じりに、時には自暴自棄に「辞める」という言葉を口にしながらお酒を飲んでいる光景がよく見られます。同僚との席であれば、「俺も辞めたいよ~」という共感の言葉で「だよな、皆辛いよな…一緒に頑張ろうぜ!」と奮起したり。
「そうは言ってもお前、辞めた後どうするんだよ?」という現実的な言葉に「だよなぁ~、今の仕事潰しきかんし…仕方ないか」とクールダウンする人もいるでしょう。もし、それでも、「やっぱり辞める」というフレーズが頭から離れなくなってしまう場合。
後悔しないよう、その思いが、きちんと頭で整理した上でも出る結論であるか、しっかり立ち止まって確認する事をおススメします。その結論に対し、後悔をする事がないように。衝動的に次の職場も決めずに会社員を辞めた場合、人はどういう事に後悔しやすいのか?紹介します。
働く事は生きる事。お金の計算、できていますか?
「自己実現の為に、働きたい」「人の役に立ちたいから、働きたい」「昔からその仕事に就くのが夢だったから、働きたい」そんな思いで仕事と向き合う事は大変素晴らしい事ですし、仕事を通して成長できるのは会社員の醍醐味と言えるでしょう。
しかし、どんな仕事にも共通して言える事は「労働の対価として賃金を得る事」でしょう。古代から現代に至るまで、人は今日の糧を得る為に汗水流して働いています。古代には「自己実現」「やりがい」という言葉はなく、そこにあるのは「労働」です。
歴史が変わっても脈々と続いているのは、「労働」と「賃金」のセットです。「やりがい」を求めて仕事を辞める事を考えるのは個人の自由ですが、「労働と賃金」や「今日の糧」については別で整理して考える必要があるでしょう。というのも、退職してもお金はかかります。
息をするだけでお金がかかる
「生活水準を下げれば収入が下がってもなんとかなる」と考えている人もいるかもしれませんが、生活する上での収支を具体的に考えないと、「今日の糧」はあっという間に消失しかねません。
退職して分かる事ですが、大人になると息をして存在しているだけでもお金はかかります。生活する上で必要な家賃・食費・光熱費の事だけではありません。年金や健康保険、税金…退職すると、「え?こんなに社会保険料ってかかっているの?」と驚愕するでしょう。
年金も健康保険も税金も自分で払う
今まで会社が計算して、納めてくれていた社会保険料。突発的に退職した後は、年金、健康保険、税金、全て自身で支払わなければならなくなります。その額は人によって様々ですが、税金は前年の所得に対してかかるので、収入がなくなっても結構な金額(数十万単位になる事も!)を納めなければなりません。
年金と健康保険も、老後やいざ病気やケガをした時の事を考えると、支払いをしておく必要があります。今まで給与明細にひっそり記載されていて、その存在を意識する事がなかった人も、退職した後で自身で社会保険料を納める事になって「人生の安心・安全ってお金がかかるのね…」と実感する人は多いでしょう。
収入がないにも関わらず、日々節約して生活しているにも関わらず、「安心・安全」費用としてお金は出ていきます。また、年金は会社員の場合、老齢基礎年金にプラスして老齢厚生年金や、企業年金などが用意されており、老後に受け取れる金額が変わってきます。
また、いざ病気やケガをして働けなくなっても、出産の為働けない期間ができても、働けない期間1日につき日給の2/3が支払われる傷病手当金や出産手当金もあります。「安心・安全」に人生を過ごしていく上で、会社がどれだけ会社員を守ってくれているか…退職を検討する前に、一度冷静になって考えてみると良いでしょう。
自分が生きていく武器、持っていますか?それは他でも使えますか?
「日々の糧」である「賃金」を、人は「労働」を通して得ています。さらに言えば、労働とは自分の持っている武器で人様のお役に立つ事と言えるでしょう。退職する前に、お金の問題と合わせて冷静に検討する必要があるのが、「自分の持っている武器」についてです。
会社は、あなたの何かしらの武器を評価し採用し、給与を払い、賞与を与え、一つ上のポジションへと昇格させています。就職活動中、「自分の強みは~」「●●なら負けません!」と学生達は一斉に自分の武器を棚卸して、自己PRとして企業にぶつけていった事でしょう。
自分の武器を認識している人はどれぐらい?
会社員となり、日々の仕事や業務の中で「自分の武器」を認識しながら働いている人はどのくらいいるでしょうか?就活中に思っていた強みと全く異なる分野で力を発揮していたり、想定外の所で大きくつまずいてしまったり。どうしても苦手な事があったり。実際の仕事にあたる事で、自分の能力は明らかになっていきます。
ただ、それを自覚する事は難しいのではないでしょうか。日々自身に目標を設定し、行動を振り返るアスリートのような習慣を持ち続けている会社員ももちろんいるでしょう。しかし、「これはちょっと苦手だな」「これは苦にならない仕事だな、得意かも」くらいのレベルで認識する事はあっても、それが具体的にどういった能力に結びついているか、他者が聞いても分かるように明確に整理し、更に意識的にその能力を伸ばすような行動を取るのは、簡単なようで難しい事です。
武器がなければ・・・
そして、そういった事をしてこないと、退職した後にどんな事が起きるか―。言わなくても分かるかもしれませんが、次の職を得るまでに大きな遠回りをしてしまう可能性があります。転職に時間がかかったり、思わぬ苦戦を強いられたり…。日々の生活費、安心安全代としての社会保険料、減っていく貯金、決まらない仕事、出ていく一方のキャッシュフロー…お金と連動し、日々不安は募っていく一方です。
特に、自身の武器を自覚していないと、仕事を選択する時点で今までと同じ苦労の道を選んでしまったりする事もあるかもしれません。「あれ?これ、前の会社の方が良かったんじゃ?」なんて事、避けたいですよね。退職にかかる労力、その後にかかる費用、その結果が「前と同じかそれ以上に悪い」…これでは、後悔するなというのが無理というもの。
まとめ
どうせ会社を退職するという人生の一大決心に踏み切るならば、後悔のないよう、「今より良い状態に変化する」と強い意気込みを持つ必要があるでしょう。その意気込みを持つ為には、「今より良い状態」とは何かをきちんと考える必要があります。
今現在会社の中にある嫌な事ではなく、人生をどう送りたいか、その為にはお金はどのくらいあれば良いか、自分の能力は何で、どういう場所で役に立てるものか。それらの総合判断が、今の会社ではない場所という選択であるかどうか。自分で考えるのはもちろん、何か機会を使ってみるのも良いでしょう。
キャリアカウンセラーに相談したり、キャリア系のセミナーに参加してみると、あまり日常では言語化されない「自分の武器」が、第三者の目を通して明らかになります。今会社で働く事ができているのも、その武器を会社が評価してくれているから。後悔のない選択をする為に、もう一度そこに立ち戻ってみませんか。