私は福祉系の学校を出た後に福祉事業をおこなう株式会社に入社したのですが、そこはとんでもないブラック企業でした。
卒業まで残り半年で就職活動
福祉系の学校に通っていた学生時代、卒業まで残り半年となったところで就職活動をスタートさせました。私の通っていた学校ではそれは決して遅くはないスタートです。
ですが、周りには内定者も少しずつ現れて私の中にも多少の焦りがありました。学校に届いていた多くの求人票の中にそのブラック企業はありました。
もちろんのその会社がブラック企業だなんてその時はわかりませんでした。求人票の内容を確認すると悪い印象は受けず、応募することにし、面接を受けてすぐに採用が決まりました。
ここからブラック企業での仕事が始まったのです。
ブラック企業への入社
入社1年目は仕事を覚えるので精一杯でした。配属になった先は会社内で1番評価の高い事業所(グループホームという形態の施設)でした。
そのために勉強になることも多く、まだこの時点ではこの会社をブラック企業だと意識することもありませんでした。
しかしながら、今思い出すと責任者が会社もしくは本社に対してグチを言っている場面は多くありました。
今だとそれがどういうことだったのかがわかります。
異動先で少しずつブラック企業を体感
2年目に別の事業所(有料老人ホームという形態の施設)に異動になりました。そこから少しずつブラック企業だと感じ始めました。
福祉施設というのは大きく分けて介護職員と看護職員で仕事がおこなわれます。ですが、異動先の事業所は慢性的な人手不足で介護職員も看護職員も足りていませんでした。
この会社は県内で多くの事業所を展開しているもののそのほとんどが人手不足であることを後に知ります。無理な事業展開をおこない、人手不足のしわ寄せが現場にきていたのです。
そんな中での仕事は本当に大変でした。
そしてそんなブラック企業には優秀な人材は残らず、初めて配属になった事業所は例外として、移動先の事業所はモチベーションの低いスタッフがほとんどでした。それ以外の事業所もほとんど同じような状況でした。
また、友人や知人などにプライベートの場面で、私がその会社に勤めていることを伝えると毎回怪訝な表情をされました。この会社の悪評が福祉業界の外にも広まっていたのです。
後にこの会社が県内でもブラック企業としてとても有名な会社であることを知りました。けれども仕事は投げ出さずに続け、入社から3年目(移動から2年目)でその事業所の責任者に任命されました。
本格的にブラック企業を体感
ここからが1番大変でした。
責任者の手当はごくわずか(数万円)で、一般的なスタッフとほとんど変わらないような給料で働いていました。
早出や残業は当たり前でしたが、『時間外の手当は管理者手当に含まれている』との会社の言い分で時間外の手当が支払われることはありませんでした。
その他の基本的な待遇も悪いものでした。毎月の給与や責任者としての手当てが低いにも関わらず、賞与もありませんでした。昇給もほとんどありませんでした。
また、福祉施設には国から介護職員処遇改善加算という処遇改善のための給付金が支給されるのですが、私も含めスタッフにはその中のわずかしか支払われることがありませんでした。
残りを何に使っていたのかは不透明で役員の懐に入っていたのではないかと疑ってしまったものです。
休みの日でも仕事の電話がかかってくるのは日常茶飯事でほとんど休んだ気にはなりません夜中に電話がかかってくることも度々ありました。1ヶ月でどれほどの時間外労働をしたのか計りしれません。体力的にも精神的にも休まらない日が続きました。
ブラック企業を退社
そんな生活を1年間続けましたが、ついに会社を辞める決断をします。
つらかったのもありますが、大きな理由は会社との信頼関係がなくなってしまっていたからです。
最後まで筋は通したかったので、急に辞めるなどは考えずにやるべき業務をすべてこなし、1ヶ月以上前には退職の意向を伝えていました。最後まで仕事に手を抜くことはしませんでした。
最後に入社以来、今まで全く使うことのできなかった有給休暇を取得して退職する予定でした。ですが、いざ退職の月になると『有給休暇は取得させない』旨の言葉が会社から伝えられました。
もはや争う気にもなりませんでした。
結局、有給休暇のほとんどを消化せぬままの退職となりました。
転職活動
転職活動はハローワークに行くことから始め、まずは自分が勤務を予定している地域の求人票を確認しました。その中で候補をわずかに絞り、その候補の口コミを調べました。
その求人先と関わりを持っている人や以前や現在勤めている人などから生の評判の声を聞きます。前のブラック企業のことがあったので生の声を聞くことを大事にしました。
そして候補をひとつに絞り、改めてハローワークに通い面接までこぎつけました。
面接では候補はそこだけで、そこが本命であると考えていることをアピールしてその場で採用が決まりました。
それが今現在も働いているホワイト企業です。
ホワイト企業への入社
同じ福祉系の会社に転職になりましたが、そこは以前勤めていたブラック企業とは違い、アットホームなホワイト企業でした。
家族経営のそれほど大きくはない会社でしたが、そこが自分には合っていました。
社長も役員も優しく相談にものってくれました。
給料は高くはありませんでしたが、気持ちよく働くことができました。常に社員のことを気にかけてくれていることもありがたいところです。
ある日、まだ基本給が低く給料だけでは生活が難しいことを正直に伝えて副業の許可を願い出ました。すると、その時に就業規則では禁止されていた副業を特別に認めてくれました。
そしてしばらくすると、就業規則も副業を認めるものに変更してくれていました。
そして現在
昇給やボーナスも定期的に考えてくれて、しばらくして副業をしなくて済むようにもなりました。
以前のブラック企業ではきちんと支払われていなかった介護職員処遇改善加算もしっかりと支払われています。
何よりいつもこちらの声に耳を傾けてくれるのが嬉しく思います。会社との信頼関係もあり、責任者を任せてもらえるようにもなりました。今現在もこのホワイト企業で心穏やかに勤めることができています。本当に転職して良かったと思います。
会社のいい評判を耳にすると誇らしくなり、より一層がんばろうと思えます。
アドバイス
ブラック企業のような大変な状況でもすぐには投げ出さずにしばらくは頑張ってみましょう。その経験が後に役に立つことがあるからです。
それに大変だからすぐに辞めるというのは逃げと同じで、1度そうなるときっと何度も繰り返してしまうでしょう。ですが、心身に影響がでるような本当に仕事を続けるのが難しい状況になったら、無理せずに辞めましょう。転職しましょう。
投げ出さずに頑張っても続けるのが難しかった転職は決して逃げではないはずです。
その経験を踏まえてもう1度、新たに頑張ればいいのです。
転職には労力もかかりますが、私のように心から転職して良かったと思える場合もあります。
ブラック企業のような環境にいつまでも身を置くのは決して良いことではないはずです。
穏やかな環境で働けることが良い人生につながると思います。