零細企業から大手企業への転職で感じた職場環境の違い

私は、長年、高齢者の通所介護施設で働いてきました。通所介護とは、一般的にデイサービスと呼ばれるもので、介護を必要とする高齢者が朝から夕方まで滞在される介護施設です。(3時間ほどの短時間滞在型の通所介護施設もあります。)

滞在中は、食事の提供や入浴介助、リハビリなどさまざまなサービスが受けることができます。私は、そういった施設で相談員として働いてきました。相談員とは、施設を利用する高齢者やそのご家族の相談受付や契約手続き、書類作成などを行う職種です。

私が、大卒後、はじめに就職した企業は、そういった通所介護施設を2か所経営する社員パート合わせて20名ほどの小規模の企業でした。介護事業を行う企業の中には、社員パート合わせて数十名の小規模の企業が少なくありません。昨今の社会の高齢化に伴い、介護事業の立ち上げを新たに行う人が増えているからです。

私がその企業に就職を決めたのは、家から近かったことと、学生時代からアルバイトをしていて、その会社の社長に大学卒業後はうちに正社員として就職してほしいとのお誘いがあったからです。

大学の友達が就職活動をするなか、大した就職活動もせず就職先が決まった私は、その時はそのことをラッキーだと考えていました。




零細企業で働いて困ったこと

社長の気分とさじ加減で全てが決まる

上記のように、大した就職活動もせず、アルバイトから、そのまま正社員になった私でしたが、正社員になってみるとアルバイト時代には感じなかった違和感を多々感じるようになりました。

まず、もっとも大きかった違和感は、なんでも社長のさじ加減とご機嫌次第で決まるということでした。私が勤めていた施設の職員は10名程でした。さらに、会社組織的に、施設長のすぐ上の上司は、その会社の社長でした。なので、社長の意向がすぐ職員に伝わり、また社長からも職員の働き具合がよくわかる職場でした。

会社を一代で立ち上げ経営してきた経営者の中にはワンマンな人が多くいると聞きます。私が勤めていた会社の社長も、そんなタイプの一人で、なんでも自分で決めたがり、日常業務の細かいところにまで口を挟むタイプでした。さらに、経営している施設は2か所だけだったので、社長がうちの施設にいる時間も割合的に多く、社長がいる間は社員も何か注意や指示を受けるのではないかとピリピリしていました。

そして、さらに残念なことに、その社長は日によって機嫌の良し悪しが違うので、職場のピリピリとした空気が社長の機嫌によって左右されました。その社長は、アルバイトやパートにはある程度甘く、社員にはきびしい人だったので、アルバイト時代には残念ながら、このことがわからず、正社員に気づきました。

仕事では社長の根性論が重要視される

私が働いていた施設は残業が異常に長く、だいたい毎日午前0時まで働いていました。電車通勤の人は、さすがに終電で帰りますが、私のように徒歩や自転車で通勤していた者は午前0時ぐらいまで働いていました

そこまで残業時間が長くなる理由の一つに、ミーティングが長いということがありました。ミーティングは、利用されている高齢者の方が帰ったあと、その日の業務内容やご利用された高齢者の体調などについて話し合われるのですが、その報告内容が細かい上に、社長の指摘、社長の訓示があり、ミーティングは数時間に及びました。

また、ミーティング後には各自の業務(日中できなかった書類作成等)があり、さらに帰るのは遅くなりました。そこまでいくと誰かがミーティングの短縮を提案しても良さそうなものですが、社長の意向が職場では絶対的であった上、社長は根性論が話すのが好きで「努力が人間を成長させる」をモットーにしており、働く時間が長いほど努力していると捉えている人でした。

その上、残業代は1円もでませんでした。本来であれば、誰かが労働基準監督署等に相談してもいいような状態だったのかもしれませんが、ほとんどの社員は相談する前に会社を辞めるというのが実情でした。

また、介護施設はどこも人手不足で、求人も多いことから、辞めても同じ業種ですぐ働く場所が見つかるというのも離職率をあげていたように思います。

気づけば3番目の古株

そんな環境だったので、就職して1年が経った頃には、私は10人程いる施設の職員の中で3番目に古株となっていました。次々、人が辞めるからです。中には1日だけ出勤して辞めた正社員の方も多々いらっしゃいました。残業時間の長さに続けられないと思ったのでしょう。

いま考えると、おかしな職場ですが、大卒ですぐ就職した私は、他の職場を経験したことがなかったので、ただ正社員の仕事に慣れるのに精一杯でおかしいと考える暇がありませんでした。そういえば、私以外にも長く続いた社員が、新卒で就職した人ばかりだったのは、そのせいだったのかもしれません。

また、アルバイト時代は、時間給で働いていたため、時間がくると帰っていたので、こんなに正社員が遅くまで残業をしているとは気づきませんでした。先に正社員で働いていた人に、もっと話を聞いてから就職を決めればよかったのですが、大したリサーチもせず、安易に就職した私の完全なミスです。

転職活動。そして大企業への再就職

数年勤め、心身ともに疲れ果てた私は、とうとうその零細企業を辞め、再就職することを決めました。しかし、次々人が辞めるその企業で数年つづいた私は貴重だったのか、散々社長に引き留められ、結局、辞めることができたのは退職を申し出てから数ヶ月後でした。

ちなみに、その企業では、引き留められることが続いて、ある日突然来なくなった社員も何名かいました。有給は取得できませんでしたが、ただ辞めることができただけで、私は開放感でいっぱいでした。明日から、あの職場に行かなくていいと思うだけで、心が軽くなったようでした。

しかし、いつまでも、その開放感に浸っているわけにはいきません。一人暮らしをしていたので、生活のためにも再就職をしなくてはなりませんでした。幸い毎月少しずつ貯金していたので、すぐに生活に困るようなことはありませんでした。そこで、次に就職する会社は慎重に検討した上で決めたいと思いました。

求人広告の会社に就職

いろいろ求人を目にするなか見つけたのが、今の会社の求人広告でした。現在、勤めている会社は日本人なら誰もが一度は聞いたことのある大手企業のグループ会社です。

はじめは、こんな大手が介護分野の事業にまで手を広げているのかと驚きましたが、現在は高齢化社会の影響もあって、もともと介護事業の会社でなくても、高齢者福祉の分野に手を広げていることが多いようです。

いろいろ情報を集めたところ、大手だけあって福利厚生等もしっかりしているようだったので、さっそく面接の申し込みを行いました。そして、1週間後に内定の連絡をいただき、無事、再就職することとなりました。

零細企業から大企業への再就職で劇的に変化した職場環境

無事、前職と同じ介護事業分野で、大手企業への転職を果たしたわけですが、零細企業から大手企業に転職して驚いたことが何点かあります。

業務上のルールが明確

まず、再就職した大手企業では、業務の細かなことまでルール化されており、それに沿って業務を行うということでした。私が以前勤めていた零細企業では、業務において明確なルールはあまり存在しませんでした。そこで、判断に迷った時は、上司である施設長や経営者に相談することとなったのですが、上述したように経営者は気分屋や思いつきでものを言うところがあり、以前とは違う指示を受けたりして、たびたび現場の混乱を招きました。

しかし、再就職した大手企業では、業務上のルールが明確にされており、なおかつ、それが文章として残っているので、それを参考に業務を進めればよかったのです。これについては、ルールが細かすぎて大変だという同僚もいましたが、私は前の職場と比べて、非常に仕事がしやすいと感じました。

また、このルールは、現場のスタッフの声に基づき作られていました。ルール作りのため定期的に現場の意見を本社社員が聞くルートも確率されていました。

もちろん癖のある人もいる

もちろん、職場では何人かの人が集まって仕事をするので、前の会社の社長のように気分屋の人やクセのある人もいました。しかし、このように業務上のルールが明確にされている以上、そういった人の発言によって仕事内容が左右されるというようなことはありませんでした。

法令遵守が重要視される

また、大手企業に転職して驚いたことは、法令遵守、個人情報保護といった考えがとても重要視されるという点です。はじめから、そういった企業に勤めている人にとっては当たり前のことかもしれませんが、新卒で、そういうことを疎かにする零細企業に就職した私には、いかに前の会社では法律などが守られていなかったのかを知ることとなりました。

残業時間は管理される

また、残業についても、残業時間はデータ管理され、残業1分おきに残業代が発生しました。前の職場ではタイムカードすらなかったので、これも私には驚きでした。

ただ、そのぶん、本社からは「無駄な残業はせず、効率よく業務を終わらせるように」との指示があり、みんな自分の業務が終われば、速やかに帰っていました。ちなみに、何年も午前0時まで働いていた身としては、5時、6時に退社しても、しばらくの間、何をしていいのかわからないという感じでした。

このように、零細企業から大手企業に転職して、私の職場環境は劇的に変化しました。もちろん、零細企業の全てが、私が勤めていたような状態では、けっしてないと思います。しかし、零細企業は、経営者と社員の距離が近いぶん、経営者の意向が仕事内容を左右しやすいのかなとも思います。

これから、転職を考えている方は、ぜひ私の体験談も参考にしてみて下さい。そして、あなたにとって、よりよい職場に転職できることを祈っております。

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