ブラック企業から転職して2年越しにやっと人生が明るくなった話

もともと、私は就職というものを真剣にとらえていない大学生でした。何年か先の仕事よりもそのとき目の前にある大学生活が大切でしたし、いずれは結婚とともに退職したい、一生働くなんて絶対にごめんだと感じていたので、正直就職するところはどこでもよく、それよりも早く就職活動を終わらせて、自分の好きなことに100%の力を注ぎたいと思っていました。

また、当時はブラック企業のニュースが毎日報道されていて、どこに入ったところで残業からは逃げられないのだと思い込んでいました。ボーナスが年間に50万円以上支給されるのは普通、有給休暇は本当に消化できるものだということすら知りませんでした。

そのため、転勤がないというだけの理由で地元の自称ベンチャー企業に就職することを決め、1ヶ月ほどで就活を終えてしまいました。そんな私の転職体験です。




入社前から辞めたかったブラック企業

いざ入社してみると、そういった理由で就職をしたこともあり、そもそもまったく興味のない仕事を朝から晩までやらされることになりました。それは元から分かっていたことですし特に不満もありませんでしたが、問題は勤務環境の方でした。まず、入社前のインターンという名目で始まった研修の時点で定時に帰れませんでした。

入社するとますますひどくなり、会社を出る時間が22時を越えることは当たり前、休憩時間に昼食を食べているとなぜか怒られ、1時間の休憩時間のうち40分以上本当に休憩していると怒られ、トイレに行くときすらそれを宣言しないと机から立ってはいけない環境、極めつけに残業代は出ませんでした。

結局辞める時までに90万円の未払い残業代があり、内容証明を出すことになりました。ボーナスは払う払うと口では言われ続けましたが、一番出た時で年間に20万、しかも払うと言われた日時からおよそ3ヶ月後にやっと振りこまれる状況でした。

お盆休みに帰省してきた友だちから会社の話を聞いて、どうやらそれなりに楽しく働いていること、また残業代のおかげで当初の求人条件よりも儲かっていること、家に帰るころにはコンビニ以外の店がすべて閉まっているレベルの残業は月に数えるほどもないことを知り、どうやら就職する場所を間違えすぎたのだなということが分かってきました。

転職活動をさせてもらえなかった

これは辞めるしかないと思いましたが、ブラック企業を辞められない人が多いのには理由があるのだと実感したのはその後からです。毎日毎日やってくる、冷静に考えて一人では片づけられるはずがない膨大な新規顧客への連絡と上司への報告、毎日30件がノルマとされる新規の電話営業、担当顧客と話すのには1件あたり30分以上かかるのに50人を超えている顧客数、そして毎日その全員に電話をかけることが義務付けられていました(留守電だったことにして半分ずつかけてもそれだけで定時は超えました)。

しかもその合間に50ページ越えのフリーペーパーの企画制作印刷配布まですべての工程を3ヶ月でやれと丸投げされ、土日に会社に来なければ電話がかかってきてどやされました。しかも会社へ反感を持っていることを悟られれば、「これくらいでめげているようでは他のどこでも働けない!」と上司が毎日呪いをかけてきます。

これは洗脳だと頭ではわかっていても、あまりの忙しさに呆然としてしまっている脳では処理しきれず、いつの間にか「私には転職先で働ける能力なんて多分無いのだろう」と刷り込まれてしまい、転職へのモチベーションを削られる毎日でした。

転職は何も怖くなかった

社内で呪いをかけられ続け、「こんなにおかしな企業で2年も働いてしまったあとでは、私を雇ってくれるところなんてどこにもないかもしれない」「一般企業の常識やマナーや仕事のやり方がまったくわからない」と自分の能力にまったく自信がないまま日々を過ごしていましたが、妻子持ちの社長と浮気してインフルエンザをうつされた状態で出社してきた上司に社内の若手全員がインフルエンザをうつされ、さらにその状態での出勤を強要されたのをきっかけに目が覚め、普通ならどこでもいいからとにかく転職をしようと心に決め、週に1日ずつ体調不良で無理やり休みをとって次々面接を受けました。

その後はわずか2週間ほどの就活で、ある社長が「そんな環境で働いていてかわいそうだからうちにきなさい」という理由で採用してくださったおかげで次の職場が見つかり、無事に転職することができました。

他に面接を受けた企業も「ぜひ二次面接に」と言ってはくれていたのですが、前職の経験で営業ノルマがある環境に恐怖を感じていたこと、直接会った社長の人柄を信用できたこと、地元で40年近く堅実にビジネスを続けている企業の内定だったことなどが決め手になり、そのままお世話になることを決断しました。

今振り返ってみると、要するに私は「怖がらなくても普通に転職できる人材」だったのだろうと思います。転職してから、何度か本当に対応の仕方が分からず大慌てで人に聞くことこそありましたが、会社の人たちとも仲良く話せていますし、昔の業務量の4分の1程度しか業務が無いので仕事の納期を破ることも絶対にありません。

何より、多少仕事がたてこんで1時間程度の残業になったとしても、かつての職場から見ればこんなものは誤差の範囲ですし、お局様に叱られることがあっても、今までの環境で理不尽な怒りに慣れすぎてしまっていたので、幸か不幸か平気です。これだけのストレス耐性があるのだから、正直どこででも働いていけるのだろうと今は思っています。

ハッピーアワーは実在した

転職してからいちばん幸せだと感じたのは、友だちと事前に約束をして、定時に会社を出て、18時スタートのハッピーアワーを開催しているお店に入り、18時ぴったりに乾杯をできたときでした。

それまでは毎日退社時間が分からず、約束はするだけ無駄だったので、会社を出られる確信を得たときに初めて予定が空いている人を探すような生活でしたし、そもそもハッピーアワーに乾杯している人なんてこの世には大学生以外いないと思っていました。18時と表示されているスマホの画面を見ながらお酒を飲んだときの幸せは忘れられません。

ブラック企業にいるなら今すぐ辞めよう

今の会社で働き始めて丸2年が経ちますが、今までの累計残業時間はおそらく30時間程度だろうと思います。ボーナスはきちんと給料の3ヶ月分が支給されますし、決算賞与もありました。休みの日には誰からも電話なんてかかってきませんし、会社を出た後呼び戻されることもありません。もちろん、社内の誰も休日出勤はしません。風邪で休んだ翌日に「大丈夫?」と上司が聞いてくださったときには、驚きすぎて少し泣いてしまいました。

もしブラック企業に勤めている人がこの文章を読んでいるなら、ためらう必要はありません。今すぐ辞めるべきです。私はあまりにもあっけなく転職できて、逆に不安になったくらいです。ブラックな勤務に少しでも耐えられたなら、絶対にどこででも働けます。そこにいるだけ人生の無駄遣いです。

それから、失業保険に頼るなんて甘えだ、ますます転職できなくなる、というのも思い込みです。私は失業保険を使ったら会社からのイメージが悪くなりそうだと思って使えませんでしたが、半年目一杯休んだ高卒の人も普通に転職して働いています。

ブラック企業がこの世の地獄なので、そこから出ることを恐れる必要はありません。健全な企業に行きましょう。私が身をもって経験したことが、誰かの役に立つことを願います。

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